03 // 2017.04 // 05
S M T W T F S
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 - - - - - -
【読書感想】アゴタ・クリストフ『悪童日記』
最近、本を読んでいる。

僕は1年に1回くらい発作を起こし、短い期間だけ本を読む。

だから年間読書数はなんとか5冊くらいになってるが、発作がないと0冊だ。



読まない理由は、他に優先したいことがあるからで近年で言えば勉強やゲームが優先だった。

それがゲームへの動機が失せてきたのと入れ替わるように、読書を始めた。

アゴタ・クリストフの「悪童日記」は、前から読みたいと思ってKindleでだいぶ前に買ってはいたが、

――そんな本ばかりだが――ようやっと手を付けた。


akudou.jpg


面白かった。

一人称が「ぼくら」という珍しい文体で、「ぼくら」の感情を表す描写や、気持ちの吐露というのは一切無い。

特異な小説だなという印象を受けた。

文章は平易で、凝った描写はない。

それは子供である「ぼくら」が書いた文章という体裁をとっているからで、その上に事実のみを書くという「ぼくら」のルールがあるからだ。

おばあちゃんは意地悪だ、と書いてはだめで、おばあちゃんは食べ物をくれないと書くのは良い。

今日は暑い、と書くのはダメで今日は30度を超えると書くのは良い。

と、人の解釈によるところを排除した文を「ぼくら」は書くのだ。

味気ない文になるかと思いきや、不思議とよく情景が浮かぶ。

物語として優れているということだろうし、こういう凝らない文章の小説でも物語が良ければ面白いという可能性を見た気がした。




舞台はヨーロッパのどこかの国。

著者のアゴタ・クリストフの故郷ハンガリーと言われている。

主人公の双子の兄弟は、おばあちゃんの家に疎開させられ、そこで色んな出来事を経験し、乗り越えて生きていく。

と書けばなんだが青春モノぽいけど、そんな雰囲気はほとんどない。

嬉しさも悲しさも、「ぼくら」の感情が分からないので、ただただ物語の展開を追うことになる。

しかし、それが退屈かと言えば全くそんなことはない。

「ぼくら」は戦争が始まって占領下におかれた街で暮らす。

そこで<兎っ子>や<神父さん>や<将校さん>などどこかが壊れている=人間臭い様々な人と出会う。

その地で生きていくために「ぼくら」が選択した様々なこと(=練習)は、周囲からは奇異な目で見られるが、

内情を知る読者は胸につまされ、意外なことに感情を見せない双子に感情移入しているのだ。




実は「悪童日記」は三部作だが、この1作目で完成しているので二作、三作目は特に読まなくても問題ない。

それは著者が、初めから三部作として書いたわけではなく続きが書きたくなったときのために書けるようにしておいた、

と語るくらいだ。

物語上、続編の必然性はない。

もちろん二作目、三作目もなかなか面白いが、一作目が一番面白いと感じた。




どうやら2013年、同名の映画も作られて、これはかなり再現度が高いというか原作の面白さを損ねていないらしいので気になっている。

長年映像化は不可能と言われていたらしい。

そりゃそうだろな、主人公の感情がない映画なんてどう作るんだ。

「ぼくら」も、ちゃんとハンガリー人の双子の子供が演じているそうで気合いが入ってる。

近々借りてみようっと。



【2016.07.23 (Sat)】 本メモ // TRACKBACK(0) // COMMENT(0)
【読書感想】杉村啓,アザミユウコ「白熱日本酒教室」

酒の味を覚えてくると色々な疑問が湧いてくる。
日本酒入門者の頃、私は本屋に赴き疑問を解決してくれそうな本を探した。
が、意外なほどに見つからなかった。

入門と書かれた日本酒の本はたくさんあった。
中身はどれも似たり寄ったりで、特定名称酒について、酒造りの工程、酒場のマナー、オススメ酒や居酒屋等が載っていた。
文字は少なく写真が多い。
オススメの酒や居酒屋に半分ほどページを割いている本もあった。

かくして私の疑問は全く解決されないまま入門書を読み終わる。
だいぶ前の事なので現状は異なるかもしれないが、これは日本酒入門書としてはオーソドックスな形であったと思う。

これまで日本酒の専門家達から提示されてきた入門知識は、酒造りの工程やオススメ酒の「紹介」が主だったものだった。
しかし、それは入門者に言わせれば“分かってない”と言わざるを得ない。
なぜなら入門者はその知識がどう生きるかを知りたいからだ。

例えば、酒造りの工程の説明だけではなく、工程の違いがどういう差につながっているのか。
ラベルの読み方だけではなく、ラベルになんと書かれている酒を選べば良いのか。
醸造アルコールの原料の説明ではなく、醸造アルコール添加が酒の味や香り、酔いにどう影響するのか。
このように、あくまで自分が酒を飲むにあたって有用になる知識が多くの入門者にとって知りたいことである。


私が日本酒を飲み始めて約10年。
酒場に通い、酒の会、試飲会などに足を運んだ。
飲んで体験し、知り合った人に尋ね、調べ、多くの時間を費やして、やっと入門者の頃の疑問は解決されていった。
素人の域は出ないが入門者は卒業しただろう。

得た知識を元に、Yahoo知恵袋や教えてgooで日本酒に関する質問に答えた時期もあった。
そこに寄せられる様々な質問を目にするにつれ、やはり日本酒入門書には入門者が知りたい情報は書かれていないという思いを新たにした。


そんな中、2014年11月に刊行された「白熱日本酒教室」は、これまでの常識を打ち破った本であった。
知識をどう生かすのか、本当に知りたい一歩先の知識がしっかりと書いてあり、これまでのどの入門書よりも入門者目線で書いてある。

普通の入門書ではお茶を濁している“結局どれがうまいのか”に対して随所でアンサーを試みる点や、難しい故にお座なりに書かれやすい料理との相性、日本酒飲みなら必ず直面する「辛口」とは何かという問題、醸造アルコールとの付き合い方、ある意味で必携アイテムでありながら本に書かれることはないウコンやヘパリーゼについてなど、通り一遍の入門書とは一線を画した内容である。
2014年らしい低アルコール清酒や日本酒にこだわる居酒屋の選び方まで網羅されている。

本の内容は、既に多くの酒飲み達によって賛辞を浴びており、これからの日本酒の教科書とも言える本であることは間違いない。



最後に、この本全体に貫かれている「自由に日本酒を楽しもう」という著者、杉村氏の主張について。

私は過去にYahoo知恵袋の知恵ノートという機能で、「【日本酒】アルコール添加とは何か」という記事を書いた。
日本酒を知り始めると醸造アルコールの添加は悪ではないか?という疑問を持つものだが、ネットで調べようにも入門者、且つ中立な視点で論じたサイトは無かった。

そこで私は醸造アルコールの添加とはどういう意味を持つのかを説明し、その是非を論じるより、日本酒の美味しさを楽しもうと主張した知恵ノートを書いた。
(あれから1年半経って、幸いにも「白熱日本酒教室」の内容と大きな差は無かったことに安堵している)

ノートの結びには「日本酒は色々な飲み方を容認する懐が深い飲み物」と書いたが、これは杉村氏の主張と同じではないだろうか。

様々な日本酒の登場や流通の発達によって今までに無かった多彩な日本酒が手軽に飲めるようになってきた。
この現代こそが一番うまい日本酒を飲める時代であると言われる所以だ。
その中にあって、先入観を持たず自由に日本酒を楽しもうという心構えでいたほうが時代に合うし、何より楽しいことは間違いない。

書かれた知識だけではなく、そんな願いにも似た杉村氏の主張が私はとても共感できたし素晴らしいと感じた。


白熱日本酒教室 (星海社新書)白熱日本酒教室 (星海社新書)
(2014/11/26)
杉村 啓、アザミ ユウコ 他

商品詳細を見る


(※アフィリエイトとかやってません)

-----
【日本酒】アルコール添加とは何か

「アルコール添加酒の酔い方」についてはちょっと修正しようかな…。

タイトルに書評とか入れてたけど、書評然としてないので読書感想にしときました。
【2014.12.31 (Wed)】 本メモ // TRACKBACK(0) // COMMENT(2)
【読書感想】町田康「告白」
熊太郎は僕なのか?

と思うほどに感情移入した。

もう何年も前から読みたいと思ってた町田康の「告白」という本をやっと買って読んだ。

当時、雑誌ダヴィンチでピエール瀧が紹介してて、僕は町田康も電気グルーヴも好きだったからそりゃもう読みたくてタマランかったけど、何となく昨日まで読まずに来てしまった。

20140619_01.jpg


谷崎潤一郎賞を受賞。
文庫で800ページを超える。めちゃ分厚い…。

ここ一両日はROはロクにやらずこの本にかかりっきりだった。

明治時代に実際あった河内十人斬りと呼ばれる殺人事件をモチーフにし、熊太郎がなぜ殺人事件を起こすに至ったかの一部始終を描く傑作。

殺人事件といっても熊太郎は決して悪人ではない。
少しの虚栄心や、人より思弁的であったことで、少しずつ歯車がズレていき後戻りできない所まで行ってしまうという、同じ境遇なら自分に起こり得たかもと思わせる点が、どーにも切ないな。

思弁的、つまり何をするにしてもあーだこーだ考えこんでしまう熊太郎の性格。
百姓の村にあっては誰も熊太郎の考えが理解できないし、本人も自分の考えがややこしくてうまく言葉にできない。

そんな熊太郎は周りから理解を得られず、いつしか周りから狂人と思われ、やさぐれていくんだな。

時代小説風だけど文章は軽やかで、現代語や口語、ヨコモジも入り混じったこれぞ町田節。
町田康の文章って笑っちまうんだよな。

一部抜粋する。

例えば、熊太郎が田んぼを耕そうとしたシーンはこうなる。
-----
 くほほ。また、耕った。ウウム。どうしても耕ったというのが俺のなかから出てくる自然な表現なのだけれども、これはやはり言葉としてはおかしいよ、と熊太郎がいちいちそんなことを考えるのは、たった二回鍬(くわ)を振り下ろしただけで田を耕すのが嫌になったからで、しかし正面から嫌だと思うとマジでできなくなるのでなんとか別のことを考えてごまかそうとしたからである。
(P231)
~中略~

熊太郎はなぜこうも、耕らない、のだろう。と思いながら鍬(くわ)をふるったが、そもそもそこが熊太郎の駄目なところであって、つまり耕すというのは他動詞である。熊太郎が田を耕す。これが正しい表現である。ところで熊太郎は先ほどから、耕った、耕った、と自動詞的な表現をしている。もちろんこれは無意識裡にやっていることでだからこそ熊太郎本人も、なんか妙だな、と思ってこれにひっかかっている振りをして目の前の労働の辛さから目を背けようとしたのだけれども、これは無意識裡に、田というものは本来はひとりでに、耕る、ものであって、我々はそのお手伝いをするだけだ、といった甘えたことを考えているからである。
(P232)
-----


また、例えば嬉しさを表現するとこうなる。
-----
そう思っただけで熊太郎は嬉しくてたまらず、足をばたばたさせつつ、両肘を脇腹につけ、肘から先をくにゃくにゃ動かしながら蛇のような目つきで左右を睥睨(へいげい)、ひゃーあー、ひゃーあー、ひゃらららー、と歌いながら座敷をぐるぐる歩き回るのであった。いったいなにをしているのかというと、これは熊太郎が考案した踊りで、一見したところまったく嬉しそうに見えないのだけれども、当人のなかでは爆発するような歓喜が渦巻いていて、その嬉しさをあえて表現しないという克己力を自分が持っているというのは、自分が猛烈に幸福であり、精神に余裕があるからそういうことができるのだ、ということを感じるということそれ自体がまた幸福、という具合にどこまでいっても幸福の皮膜で覆われるという複雑精妙な心の動きを表現した踊りなのであった。
(P556)
-----

彼の行動の意味は全く分からんが、なんか凄い嬉しいんだということは分かる。

とまぁ、こんな調子で1センテンスはやたらと長いがリズムがあるし面白いのでずんずん読める。

熊太郎はちょっと不器用なだけで、問題は理不尽なことを要求してきた周りにあったようにも思える。
ちょっとしたボタンの掛け違いじゃないか?と思うんだが、周囲にはあぁやっぱり狂ってると思われる。

しかし読者は、一見して意味不明な熊太郎の考えは全部書いてあるし、自分もこんなとこあるよなーとか思ってるうちに、熊太郎、こいつは自分だ!と思うに至る。

だから後半はどんどん胸が苦しくなってきて、同情っていうよりも身につまされてくるね。

いつしか自分が熊太郎になったような気分になって、こりゃ殺るしかねーよ!と完全に熊太郎に同調してる。
犯行の段階ではある種のカタルシスさえある。


いささかもこの本の面白さを表現できた気はしないけど、ホントに凄く面白いんだよ!!

あぁこれが思ってることがうまく言葉に出来ないことだなぁなんて一人でウンウンとか思う。思っちゃう。




ところで河内十人斬りは、河内音頭の定番曲だそうだ。

河内は現在で言えば、大阪の東部。

昔、河内(かわち)と言われたその地域に、今も伝わる河内音頭。

古い感じがしないのは、テンポが早くて8ビートだからか?
殺人事件がモチーフだけど、任侠的な敵討ち物語として歌われてて、盆踊りにはこの曲で踊るそうな。

なんか物騒だなと思ったけど、そういえば青森県の弥三郎節っていう民謡は、嫁をイジメて嫁が実家に帰るっていう内容だったと思いだして、そういうもんかと納得した。




アマゾンで中身がちょっと見れるから、もし気になる人いたらどうぞ。


告白 (中公文庫)告白 (中公文庫)
(2008/02)
町田 康

商品詳細を見る


【2014.06.19 (Thu)】 本メモ // TRACKBACK(0) // COMMENT(4)
喜びは悲しみの水源であるとオプルは言った。
休日なのにROをやらずに。

中島らも「ガダラの豚」を、約10年ぶりに再読していた。

20140531_01.jpg

日本推理作家協会賞を受賞してるんだけど、はっきりいって推理?ではないな。

日本とアフリカの広大な世界観を舞台にしたホラー小説?

うーん、違うかな。


幅広い知識をベースにしたリアル路線でありながら、アクション、ホラー、ファンタジーとなんでもござれの小説。

日本酒とビールとアフリカの密造酒をチャンポンしたような、大げさで複雑。
それでいてウマイっていうね。



中島らもの著作は基本的には短編が多い。

けど、この本はⅠ、Ⅱ、Ⅲの3冊にもなる。


ⅠとⅡは、ギャグを交えながらも比較的真面目な内容。

日本の新興宗教と民俗学と超能力、日本人が持っているアフリカの土人的イメージ、アフリカでの呪術の役割など、見てきたかのようなリアリティと展開でワクワクする。

Ⅰは新興宗教にはまった妻を救うために、プロのマジシャンと協力して教祖が起こした奇跡のタネを暴いていく話で、導入部として最高に面白い。

特にⅡは、暗示される危険とだんだん事実が明らかになってくる展開にページをめくる手が止まらんね。

得体の知れない物の“不吉な予感”にゾクゾクするし、一方で主人公たちの平和なやりとりとの対比が一層不安を掻き立てる。

心なしか10年前に読んだ時よりすんなり頭に入るし、理解力も上がっているせいか実に面白い。

20140531_02.jpg

Ⅲについては賛否両論。

ⅠとⅡに比べて毛色が違うもんだから、当時Ⅲを読んだときは蛇足だと思った。

でも今あらためて読むと、Ⅲは小説としては絶対必要だと思うね。



ネット上の書評の多くで読み終わるまで寝られない小説と評されてる。

事実、僕は10年前にこれで徹夜した。

今読んで、また印象が違ったけどやっぱり最高だったねこの本は。大好きだ。

20140531_03.jpg

そういう自分の感じ方の変化を感じながら。

ノドについては痛みの質は変化したものの治らんなぁ。

喋るのも若干面倒に感じるくらいだし、ツバを飲み込むのも痛い。

やっぱり誰かに呪いをかけられたと考えるのが自然だな。

【2014.06.01 (Sun)】 本メモ // TRACKBACK(0) // COMMENT(2)
| BLOG TOP |
CATEGORY


RECENT ENTRIES


RECENT COMMENTS


RECENT TRACKBACKS


MONTHLY ARCHIVES


LINKS


SEARCH THIS SITE
MY PROFILE
aihara
  • aihara
  • fishing of the boss,by the boss,for the boss
    おったな!

Powerd by FC2ブログ
Material by A Trial Product's
Template by chocolat*
©Gravity Co., Ltd. & LeeMyoungJin(studio DTDS) All rights reserved.
©GungHo Online Entertainment, Inc. All Rights Reserved.
当コンテンツの再利用(再転載・配布など)は、禁止しています。
   
Copyright © 2005 津軽海峡冬ブログ All Rights Reserved. 【 / 】